第7 回目 「オート(自動露出)」モードを使いこなせ !
「十年一昔」とよく言いますけれど、"二昔" くらい前までは、露出の決定は写真撮影でもっとも難しい技術のひとつとされていました。でも現在のAF一眼レフカメラ(そしてMF一眼レフカメラの多く)は、自動的に露出を調整する機能を搭載しています。自動(Automatic)露出(Exposure)ですから「AE(Auto exposure)」と略します。
しかしながら今も昔も露出のコントロールは、1.)レンズの絞り(値)と、2.)シャッター速度の二要素を変化させることに違いはありません。オート(自動露出)モードには、さまざまな種類がありますが、それぞれの特徴(長)をよく理解し、写真写りの広がりを探究して欲しいとおもいます。
また、これらを理解すれば、「Nikon FM3A」、(「New FM2」)、「FM10」のようなマニュアル露出専用のMF一眼レフも、よりよく使いこなせる筈です。
1. 失敗を減らす「マルチプログラム」モード
レンズの絞りを絞り込めば、被写界深度は深くなり(第 6 回参照)、ピンボケの失敗が少なくなります。また、シャッター速度を速くすれば、被写体ブレやカメラブレの失敗が少なくなります(第 5 回参照)。しかし、これらを両立するには、被写体がある程度明るく(=後述の EV 値が大きく)ないと無理です。
あるいは、より高感度のフィルムを使用する必要があります。
しかし、いつも明るい被写体ばかりを撮るというわけにも、一眼レフに高感度のフィルムを装填しているわけにもいきません(ちなみに、「PRONEA S」を代表とするアドバンストフォトシステム(IX240判)AF一眼レフならば、撮影途中のフィルムカートリッジを交換できるMRC機能を搭載しています)。
そこで、できるだけピンボケでなく、ブレも少ない、つまり失敗のより少ない撮影が可能になるよう、絞り(値)and/or シャッター速度を自動調整するのが、「マルチプログラム」モードです。もちろん、スピードライトを使用した撮影も可能です。
こうしたわけで、カメラの操作に不慣れな時や、とにかく写す必要がある場合には、このモードで撮影するといいでしょう。「マルチプログラム」モードは、「必ず写す(写さねばならない)」というプロの要求にも応えうるものなので、最近では最高級機種にも搭載されています。
もちろん、被写体の明るさがある程度暗い場合には、ピンボケになったり、ブレたりする可能性が増しますから、注意してください。
1.1. プログラム線図の読み方
ここでは、ニコン「F70Dパノラマ」のマルチプログラムオートのプログラム線図を題材に、プログラム線図の読み方を簡単に紹介します。
後に紹介する「イメージプログラム」にも、それぞれこうしたダイヤグラムがあり、これに従ってカメラは作動します。
プログラム線図
まず、グラフの各部の説明を簡単に......。
- 縦軸:レンズの絞り値を指します。
- 横軸:シャッター速度を指します。
- 斜線:EV 値を指します。単純に被写体の明るさと考えてください。EV 値が小さいほど暗く、大きいほど明るいことを意味します。つまり、この図の左上が最も暗い被写体で、右下に行くに従って明るい被写体を意味します。
EV とは、Exposure Value の略で、"露出値" といった意味です。
EV 0 が、絞り値=f 1、シャッター速度= 1 秒で適正露出になる被写体の明るさを意味します。
絞り or シャッター速度が一段上下するごとに、EV 値は 1 づつ増減します。
例えば、絞り値=f 1 をf 1.4 に、シャッター速度= 1 秒を1 / 2 秒にすれば(=絞りとシャッター速度をそれぞれ1段づつ増)、0 + 1 + 1 = EV 2 となるわけです。
ISO100 のフィルムの場合の EV 値は、晴天順光時で EV 15、曇天で EV 12、日光の入る室内で EV 7、人工照明の室内で EV 5 程度です。
さて、図の赤線は、AI AF Nikkor 50mm F1.4D レンズ装着時のプログラム線図です。左上からみていきましょう。
EV -1 (かなり暗い被写体)では、絞りは F1.4 開放、シャッター速度は 4 秒に設定されます(図の(1))。
被写体の明るさ(EV 値)が増すのに応じて、専らシャッター速度を速めて対応します(図の(2)の辺り)。
しかし、EV 4(=シャッター速度 1 / 8 秒)を超えると、シャッター速度を速めるだけでなく、絞りも絞り込んでいく設定です(図の(3))。
被写体が EV 4 より明るくなるのに応じて、絞りとシャッター速度の両方を均等に調整して適正露出として行きます(図の(4)の辺り)。
さて、被写体が大変明るくなり、レンズを固有の最小絞りまで絞り込むと、それ以上の絞り値での露出調整は無理ですから、あとはシャッター速度で調整します(図の(5))。
マルチプログラムオートで大切なのは、図の(4)の領域です。EV 4 というかなり暗いシーンから、EV 19(=屋外の相当明るいシーン)まで、できるだけ失敗を避けるように、絞りとシャッター速度の組み合わせを調整・設定しています。
では、次に、より焦点距離の長い望遠レンズを使う場合(AI AF Nikkor 180mm F2.8D =青線、AI AF Nikkor 300mm F4D IF-ED =緑線)に目を移してみましょう。「F70Dパノラマ」のような現行AF一眼レフの殆どでは、レンズが CPU(メーカーによって呼称も実体も異なります)を内蔵していれば、レンズ固有の焦点距離などのデータは、電気的にレンズからAF一眼レフに伝達されます。
プログラム線図
青線(180ミリ)、緑線(300ミリ)も先の 50ミリ レンズの領域(=赤線)から右にずれて(=右にシフトして)いますね。これは、焦点距離が長い(=撮影距離が同じでも撮影倍率がより大きくなる)望遠レンズではブレがより目立ち易くなりますから、できるだけ速いシャッター速度を使うようにとプログラム線図を設計しているからです。
さらに、スピードライトを使う場合(=黄線)には、シャッタースピードがシンクロ同調速度(「F70Dパノラマ」は、1 / 125 秒)を超えないように、絞りによって調整していることも理解できるはずです。
このように、プログラム線図とは、被写体の明るさに対応して、絞りとシャッター速度の組み合わせを設計(デザイン)したものです。マルチプログラムオートは失敗のない撮影ができるように設計し、次に紹介する「イメージプログラム」は、イメージどおりの写真が撮れるように設計したものです。
線図を読むと、プログラムがどのような設計思想で作られ、どのように使うのがもっとも効果的かが一目瞭然です。
2. イメージどおりに仕上げる「イメージプログラム」モード
最近のカメラ ---AF一眼レフだけでなく、コンパクトカメラにも---、モード設定をおこなうだけで、イメージどおりの写真が撮れる(!?)「イメージプログラム」が搭載されている機種があります。
「イメージプログラム」とは、ボタンやダイヤルを操作して(メーカーによっては、プログラムカードを挿入したり、バーコードリーダーで設定をいちいち読み込まなければならないものがあります)、撮りたい写真の「イメージ」を選択するだけで、絞りやシャッター速度、スピードライトの発光の有無(および発光量)などを、必要に応じて自動的に調整する機能です。
カメラの仕組みを全く知らなくても、これらから正しく選択するだけで、誰にでもイメージどおりの(!?)写真撮影ができます。
しかし、だからといってどのようなシーンでも、どのようなケースでも上手く撮れるとは限らないのが、ちょっと困ったところです。
なぜなら、「イメージプログラム」が調整するのは、結局のところ絞りとシャッター速度、そしてスピードライトの発光の有無と調光だけだからです。これらだけで、写真のイメージの全てをコントロールすることは不可能です。
大切なのは、1)それぞれの「イメージプログラム」の特徴を知り、2)レンズの焦点距離やフィルムの感度などを正しく選び、3)対象に適した「イメージプログラム」を選ぶ / 「イメージプログラム」に適した対象を撮影すること、です。これらを良く理解して上手く使いこなして欲しいとおもいます。
さて、「一眼レフの上位機種には『イメージプログラム』機能を搭載しない」というメーカーが多いようです。「絞り / シャッター速度の関連、絞り値 / レンズの焦点距離 / 撮影距離による被写界深度の変化......といった最低限の写真の知識があれば、こうした機能を使わずとも、イメージどおりの写真を撮影できる筈だ」という設計思想からでしょう。
でも、操作をいちいち自分で考えるのも面倒な時もあります。こうした場合にも、「イメージプログラム」は大変便利な機能です。
2.1. 「風景」・「記念写真」・「クローズアップ」
これらは、基本的に、レンズの絞りを絞り込んで行って、手前から奥までの広い範囲にピントを合わせうるようにプログラムしたものです。
このため、被写体がある程度暗い場合には、シャッター速度はかなり遅くなりますから、ブレに注意(=被写体ブレにも手ブレにも注意!)する必要があります。
それぞれの特徴と使い方のポイントを整理します。
「風景」モード
風景のみ、一般的に撮影距離が遠い被写体だけを撮影する場合に、画面全体をシャープに写すことができます。
広角から望遠まで、どんなレンズでもO.K.ですが、近すぎる被写体が画面の中に入っていると、それはボケて写ることがあります。
★三脚を使用し、低感度≒微粒子のフィルムで撮影すると、細部まで美しい風景写真を撮影できるでしょう。
「記念写真」モード
風景と、その手前に配した人物などの両方にピントを合わせた撮影を行いたい時に使うモードです。
「風景」モードよりも更に絞り込んで被写界深度を稼がねばなりませんから、望遠レンズではピントの合う範囲に限界があり(=被写界深度が浅い)、標準〜広角レンズを用いるのが原則です。
ただし、あまり人物などに近寄り過ぎると、背景の風景はボケて写ります。せいぜいバストアップまでにするのがコツでしょうか。
★ISO 400クラス以上の高感度フィルムを使えば、ブレも少なく被写界深度もかなり確保した記念写真を撮れます。
「クローズアップ」モード
花や小物などに「近接して拡大して」撮影する時に使います。
もちろん、レンズはマイクロレンズ(ニコン以外ではマクロレンズといいます)、マクロ機能付きのズームレンズなどを使用するか、クローズアップレンズをレンズ前枠に装着して撮影します。
一般に接写は、ピンボケやブレの失敗が多いものです。こうした失敗をあるていど防止すべく、ある程度のシャッタースピードは確保しつつ、レンズをできるだけ絞り込むプログラム線図になっています。
屋外でも晴天でない場合には、必ず三脚を使うことをおすすめします。
★ ISO 400クラス以上の高感度フィルムを使えば、失敗はより少なくなります。
「動感」モード
遅めのシャッター速度で(=絞りは絞って)撮影することで、被写体や背景などを大きくブラした撮影ができます。
水の流れなどを表現する場合には、三脚を使います。レースやスポーツなどを撮影する場合には、被写体をファインダー内に追いながら(流し撮り)撮影します。いずれも標準〜望遠レンズがいいでしょう。
★ フィルムは低感度フィルムが比較的おすすめです(明るすぎる場所での撮影には不向きですが)。
2.2. ポートレート・スポーツ
レンズの絞りをできるだけ開けることで、背景や前景を大きくボカす(「ポートレート」)、ないし速いシャッター速度にして一瞬を写し止める(「スポーツ」)モードです。
2.1. の「風景」や「記念写真」、「クローズアップ」、「動感」モードとは、裏返しの考え方です。
「ポートレート」モード
絞りをほぼ開放近辺で撮影するようにプログラムしています。
ただ、被写体と背景や前景との距離差が小さい場合には、背景や前景はほとんどボケませんから、これらの距離差をできるだけ大きくし、被写体にできるだけ近づくのがコツです。被写界深度が浅い焦点距離の長い望遠レンズがおすすめです。
★ 低感度フィルムで、直射日光の当たっていない場所で撮影するときれいに写ります。
「スポーツ」モード
できるだけ速いシャッター速度で撮影するモードです。
スポーツは動きが速いものが殆どですから、その動きをファインダーで追えるように練習しておくといいでしょう。開放 F 値の小さな(明るい)レンズを使えば、より速いシャッタースピードで撮影できます。
焦点距離のより長い望遠レンズを使えば、より遠くから被写体を大きく撮影でき、よりダイナミックな写真になります。
★ できるだけ高感度なフィルムを使います。室内スポーツなどでは ISO 1600 ないし3200 などがおすすめです。
2.3. 「夜景」・「シルエット」
夕暮れや夜間の撮影は、昼間の撮影とは全く感覚が異なりますが、基本的には絞りとシャッタースピードを調整するだけで、十分美しい写真を撮影できます。これを自動的に調整してくれるモードが「夜景」モードです。
「夜景」モードでは、さらにスピードライトの光量も自動調整します。
「シルエット」モードは、ふつうの撮影であれば補正の対象になる逆光の状態を活かすモードです。
「夜景」モード
基本的には「風景」モードと同じような考え方です。
夜間の撮影ですから、シャッター速度は大変遅くなっていきます。このため、三脚は必ず使用します。
★ 中庸な感度ないし低感度フィルムを用いると細部まできれいに写ります。
さらに、「夜景」モードを選択してのスピードライトを使った夜景を背景にした人物撮影では、
- 手前の人物は、スピードライトの閃光で写し止め、
- 背景の夜景は、スローシャッターで露出する
=いわゆる「スローシンクロ撮影」で、人物も背景の夜景の雰囲気も美しく撮影できます。
カメラ内蔵のスピードライトでスローシンクロ撮影をするときには、一般に光量に限りがあるので、人物までの距離を 1 〜 3 メートル程度(=フィルムの感度が ISO 100 の場合の撮影距離)と控えめに取ることがコツでしょう。
広角〜標準レンズを使い、三脚を必ず使用します。
★ ISO 400 クラス以上の高感度フィルムがおすすめです。
ちなみに、一眼レフではありませんが、あるメーカーのコンパクトカメラには、
- 手前の主要被写体は、オートフォーカスで測距 & スピードライト撮影、
- 背景の夜景をシャープに写すために、強制的にピントを無限遠に設定 & スローシンクロ撮影、と、カメラが 2 回シャッターを切って(=多重露出して)1 コマに写し込む(="スーパー夜景モード")という機能が搭載されています。
手前の主要被写体はもちろん背景の夜景にもピントがより確実に合っている、という面白い仕組みです。
「シルエット」モード
明るい景色を背に被写体が存在する場合に、被写体を暗く「シルエット」にして撮影するモードです。
他のモードとは違い、被写体の暗さを無視して(=逆光を補正しないで)、明るい背景に露出を合わせるように作動します。このため被写体が暗くても、スピードライトを発光させません。
★ もともとシルエットに見える被写体を選ぶのがコツ(!?)でしょうか。
3. 意図的な操作ができる「自動露出」モード
以上のプログラムモードでは、絞りとシャッター速度の両方を、カメラが自動的に調整します。しかし、絞りを自分で設定して被写界深度をコントロールしたい時、あるいはシャッター速度を自分で設定してブレをコントロールしたい時には、プログラムモードは少し不具合です。
こうした場合に使うのが、絞り優先 [A] モードやシャッター速度優先 [S] (メーカーによっては [Tv] と呼称)モードです。
露出決定は、プログラムモードと同じ精度ですから、安心して使ってください。
これらのモードの使い分けに慣れると、写真表現の世界がグンと広がります。
3.1. 絞り優先 [A] モード
絞りを開けて撮影
絞りを絞って撮影
絞りを自分で決めれば、シャッター速度はカメラが自動的に調整します。
被写界深度を浅くして背景などをボカしたい場合には、できるだけ開放絞りにします。
逆に、被写界深度を深くして手前から奥まで全てにピントを合わせたい時には、絞り込みます。
プレビューといわれるレンズの絞り込み機構のある一眼レフなら、ファインダーでおおよその被写界深度を確認できます。
ただし、最近の各社のAF一眼レフには、ファインダーの見掛けの明るさを最優先するあまりファインダースクリーンのマット面をあたかも素通しにしたかのようなカメラがあるようです。 |
3.2. シャッター速度優先 [S] モード
速いシャッター速度で撮影
遅いシャッター速度で撮影
シャッター速度を自分で決めれば、絞りはカメラが自動的に調整してくれます。
動きの速い被写体を止めて写したいなら、できるだけ速いシャッター速度を選びます。
逆に、ブレを活かした撮影や、動感を表現する場合には、遅いシャッター速度を選びます。
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シャッター速度優先 [S] モードを搭載したニコンAF一眼レフに、絞りリング(=絞りの操作環をこう呼びます)を有するレンズを装着したときには、絞りリングを最小絞り値に設定すること(=絞りリングを有するAF Nikkor レンズは、絞りリングを最小絞り値にロックする機構がついています)を忘れると、自動絞り機構は正しく作動しません。 また、現在市販のAF一眼レフはメーカーを問わず、CPU(メーカーによって呼称も中身も異なります)を内蔵したレンズを装着しないと [S] モードも [P] モードを選べないカメラがほとんどになってきたようです(詳しくは各社の「使用説明書」をお確かめください)。 |
「[A] モードも、 [S] モードも面倒だ」と思われる方がいるかもしれませんが、写真写りを自分なりにコントロールしたい向きには、これらがやはり便利なのです。
さて、今回はここまで。露出決定は難しいものです。ですが、一つずつ自分で決めて、自分で操作することを覚えていって欲しいと思います。はじめは「マルチプログラム」、次に「イメージプログラム」、そして、絞り優先 [A] か、シャッター速度優先 [S] というステップアップでいいと思います。


