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1.商品のイメージを考える。

  まず始めに、イメージという言葉の意味を正確に理解しておきましょう。広辞苑をひもとくと 次のように書かれています。
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  『イメージ【image】』
   1)心の中に思い浮かべる像。全体的な印象。心象シンショウ。
   2)姿。形象。映像。
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 ちょっと注意してくださいね。1)は心の中の像であって、人の目で見ることのできないものです。これに対して、2)は写真にも共通するもので、人の目で見ることができるものです。

 ここで、「商品のイメージ」という言葉の意味を再確認しておきます。

 目に見える商品の姿や形象、あるいはその写真を指すのは当然ですが、本当に大切なのは消費者やユーザーが心の中に抱く像そのもののはずです。ちょっと不細工な形をしているけれど、本当に使い勝手がよい商品。あるいは、めちゃ臭いけれど、実に旨い商品。こうした商品は、

 世にたくさんあります。逆に言えば、見栄えだけ、匂いだけ、といった詐欺的(?)な商品もたくさんあります。

 ここで、商品写真。

 ある意味で、これこそが詐欺的商品の代表格といっていいです。なんてったって、実物を見たり触ったり食したりすることができない人に、実物以上のイメージ(使用感や触感や味覚など)を抱かせるのが、商品写真だからです。

 詐欺的というと、響きはよくありませんが、商品写真に求められる肝心要は、ここにこそあることを正しく認識しておくことは大切です。

  ▼ステップ1・さまざまな商品写真を観察しよう。  
 

 日頃、普通に目にしているカタログや雑誌の類を、ちょっと別の目で見ることからスタートします。

 カタログや雑誌の商品写真を私たちが普通に見る時、私たちの意識は、その商品を使ったり触ったり食したりすることを前提としています。要するに、写真を見ているのではなく、商品そのものを見ています。

 そうではなくて、その商品写真の撮影は、どのように行われているのか? と考えながら見るようにしてみましょう。

 もちろん、今の皆さんには、わからないことだらけかもしれません。でも、わからないながらも、商品そのものでなく、写真を見るようにしていると、まったく別のものが見えてきます。

 ここで見えてくるものは、写真の技術であるだけでなく、その商品を作っている会社や人のセンスであったり哲学であったりします。これらが見えてくるようになった時、皆さん自身の商品撮影の技術やセンスや哲学は相当高度なものになっているはずです。

  ▼ステップ2・基本的な考え方。
 
 写真A
 写真B
 写真C

 上の3点の写真を見比べてください。Aは、ごくごく普通に撮ったような感じがしませんか?そして、これに比べるとBは、中身がよく見えます。なぜかというと、中身が大きく写っているからです。そして、一応、形の違う商品の全てが写っています。Aの中央部分を大きく撮影しただけなのですが、AとBを見せられた時の印象はかなり異なるはずです。

   どちらが好ましいですか? 

 もちろんですが、写真の用途によります。

 さて、Cはどうでしょう。Bの背景部分の白地を、ちょっとかわいい、ねずみの模様の和紙に変えてみたものです。「福」という文字も見えます。こうするだけで、なんとなくお祝い事をイメージできませんか? 入学祝いや卒業祝いにも、このお菓子がいいですよ。ってな感じ。

 写真は、基本的に四角い画面です。この中に見える要素だけで、全てを表現する芸術であり、仕事であり、遊びです。画面の中に、どの要素を入れ、どの要素を入れないか、だけで、イメージは大きく変わります。

  ▼ステップ3・中身を見せる。

 写真A
 写真B
 写真C

 先程のお菓子。中身を取り出して写したのが、Aです。まあ、味気ないことこの上ありませんね。

 ちょっとお皿に入れてみましょうか。って一個だけ載せたのがB。まあ、貧乏くさいことこの上ありません。お皿を変えて撮っても(C)同じですね。 

 写真D
 写真E
 写真F

 Dは二つのお菓子の一つを半分にカットして、小さなお皿に入れ、カットした部分がよく見える角度から撮影したものです。もう、格段の差ですね。ちなみに、ライティングはA〜Cとほとんど同じです。

 Eは、お菓子のパッケージを左側後方に、右側後方にグラスをおいてみたものです。これから食べるところっていう感じがしませんか? ちなみに、グラスは献血30回記念で頂いたもの・・・。もちろんですが、こんなことは書かなければ誰にもわかりません。写真って、事の真相を伝えるものではありません。

 さて、F。和紙の上においてみました。これだけで、和風の感じが強くしますね。Dとは少し違ったイメージになりました。

   ▼ステップ4・商品が作り出す世界。

 写真A
 写真B
 写真C
 
 今度は懐中時計です。黒い大理石の上におかれています。大理石=高級といったイメージは多くの人に共有されていますから、それだけで高級な時計のように見えます。もっとも、私の価値観でいうなら相当高級な、2万円もした時計ですが・・・。

 でも、Aのように離れて写すと、その高級感が薄れますね。なぜでしょう。単純に言えば、見せすぎているからです。高級感=隠される物、といったイメージも、多くの人が共有しているもののはずです。さらにいえば、画面の中に時計が占める面積が小さいこともあげられるでしょう。

 Bのように時計だけを大きく写すと、少し高級感がでました。でも、やはり黒い大理石が画面の多くを占めていますから、ちょっと陰鬱な感じが残っています。

 Cは、もっと時計を大きく写し、チェーンや止め金具の銀色を多くしたもの。AとCでは、価格がかなり違う感じがしますね。

さて、先のA〜Cでは、時計の大きさがよくわかりません。もちろん懐中時計ですから、数センチくらいの大きさであることは常識的にわかります。しかし、それが2センチなのか5センチなのか?はわかりません。でも、懐中時計の2センチと5センチの差はとても大きなものです。

  写真D   左の写真 Dは、時計の手前に万年筆をおきました。こうすると、時計がだいたい3〜4センチくらいであると予想できます。実物は3.5センチ程度です。そして、万年筆により高級感が増したようにも感じます。
 写真E
 
 左のEは、 ジーンズのポケットの上に置いたもの。全然関係ありませんが、撮影中にはいていたジーンズですから、この撮影を行っている間は、パンツ一丁・・・。これも、写真ではわかりません。でも、この写真を見ていると、懐中時計もカジュアルに使えるなって思いますね。
 写真F
 左の写真 Fは、白サテン地の布の上においたものですが、これを見ていると、女性が持つ時計のようなイメージもします。

  下地と商品の組み合わせだけで、それが使われる世界のイメージががらりと変わることが理解できると思います。
  同じ商品でも、写真でどのように見せるか?で、誰がどのように使うものか、といった商品世界が変わってくることに注意しましょう。この変わり方をうまく使えば、新しい顧客層の開拓にもつながります。

 さて、今回は、ここまで。

 次回までに、皆さん自身、上に紹介したステップ1〜4を参考にして、さまざまな商品写真を見ながら、それらの写真が何をイメージしているのか? を少し考えてみてください。さまざまな興味深い発見があるはずです。