titlill

11.ネガフィルムを使いこなす。

写真表現の多様性を考える。


写真①/『撮りっきりコニカもっとMiniフラッシュセピア』
写真②/『コニカMonochrome・セピア調400』
写真③/共にカラー現像が指定されています。モノクロ現像はできません。

 モノクロフィルムもカラーネガフィルムも、同じネガフィルムです。

 ですから面白いことに、モノクロフィルムの画像をカラー印画紙にプリントしたり、逆にカラーネガフィルムの画像をモノクロ印画紙にプリントすることができます。いったい、どのような写真ができるでしょうか?

 ちょっと特殊な写真と思われるかもしれませんが、最近流行しているセピア調プリントもこうした仕組みを利用したものです。

 普通のモノクロプリントやカラープリントではない、一味違った写真を仕上げてみませんか

 『撮りっきりコニカもっとMiniフラッシュセピア』や、7月に新発売された『コニカMonochrome・セピア調400』を使えば、なんとなくレトロっぽい雰囲気のセピア調の写真が仕上がります。

 これらのフィルムは実質的には同じISO感度400のモノクロフィルムですが、とても興味深いものです。





新しいモノクロフィルム


写真④A/コニカMonochrome・セピア調400で撮影したネガ。通常のカラーフィルムと同じ橙色がベースになっていますが、画像に「色」がありません。
 基本的にこれらはモノクロフィルムです。ですが、不思議なことにカラーネガフィルムと同じ現像処理(C-41/CNK-4)を行います。そうすることで初めて、モノクロのネガを得ることができるのです。通常のモノクロ現像はできません。

 変なフィルムですよね?

 簡単にいうと、これらのフィルムは普通のカラーネガフィルムから「色」をなくしたものと考えればよいでしょう。普通のカラーネガフィルムは3原色の光をそれぞれの補色として記録しますが、これをただ一色(黒)だけで記録しているのです。ですから、普通のモノクロフィルムと同じモノクロ画像になるのです。

 違いは、普通のモノクロフィルムの画像が「銀」でできているのに対し、新しいモノクロフィルムの画像は「黒い色素」でできているところにあります。ですが、実用的にはカラー現像するかモノクロ現像するかの違いだけで、撮影時のフィルター操作やプリント操作はまったく同じと考えていいです。(一般にカラーネガフィルムは増減感現像はできませんから、新しいモノクロフィルムも増減感現像はできません。また、これらのフィルムはベース面が普通のカラーネガフィルムと同じ橙色をしていますから多階調印画紙を使用する際には注意が必要です。)

セピア調プリントって何?

写真④B/ネガAから作成したセピア調プリント。これはモノトーンのカラープリントで、普通のモノクロプリントとは異なります。
写真④C/ネガAから作成したモノクロプリント。
 さて、これら新しいモノクロフィルムのネガからセピア調のプリントができることは、テレビコマーシャルなどでも皆さんご存じのはずです。実際に使ってみた方も多いと思います。

 このセピア調プリントというのは何なのでしょうか? 実をいうと、セピア調というのも一つの「色」ですから、これも一種のカラープリントなのです。実際に使っている印画紙も現像処理も普通のカラープリントと全く同じです。つまり、セピア調プリントというのは、モノトーン(単色)のカラープリントというわけです。なぜ天然色でなくてモノトーンになるのかというと、モノクロフィルムに記録された画像がモノトーンだからなのです。

 ですから、新しいタイプのモノクロフィルムを使わないとセピア調のプリントができないわけではありません。普通のモノクロフィルムからでもセピア調プリントを作成することができます。手元にあるモノクロネガからでもOK。「セピア調プリントにして欲しい」と伝えればいいだけです。プリント料金も、多くは変わらないはずです。

モノトーンのカラープリントを作成する。

写真⑤A/通常のモノクロネガ。
 セピア調プリントというのは、モノクロネガからカラープリントを作成したものだということがわかりました。ここで、8月号で紹介した、ネガカラープリントの色調整を思い出してください。ネガカラープリントでは、プリント時にフィルター操作を行うことで、プリントの色をさまざまに調整できました。

 さてさて、何か閃きませんか?

 そうです。モノクロネガからカラープリントを作成する際にフィルター操作を行えば、セピア調だけでなくさまざまな色調のモノトーンのカラープリントが作成できそうです。

 事実。そのとおりのことが可能です。ここには通常のモノクロフィルムから作成した数種類の色調のプリントを掲載しますが、これ以外に無限の色調を楽しむことが可能です。もちろん、どちらのタイプのモノクロネガでも構いません。

 モノクロネガをプリントする際に、希望する色調の見本(印刷物でもOKです)を添え、手焼きのカラープリントでお願いすればいいでしょう。注意したいのは、色調にあまり厳密さを求めないことです。

 モノトーンですから、プリントの微細な色調の違いがずいぶん気になるものですが、見本と全く同じ色調に揃えることはまず不可能ですので、できるだけ大雑把に考えて貰いたいと思います。また、手焼きプリントでの処理になりますから、通常のセピア調プリントよりはかなり高価になってしまいます。ですが、他にはない自分だけの色調を楽しめることは請け合いです。

写真⑤ モノクロネガからカラープリントを作成  モノクロネガからカラープリントを作成する場合、フィルターを操作すれば基本的に全ての色調を作りだすことができます。セピア調とういうのは、弱い赤味(R)に似ています。
写真上左/ネガAから作成したセピア調プリント。
写真上中/ネガAから作成したモノクロプリント。
写真上右/プリントCを見本に添え、色調を揃えてもらったカラープリント。
写真下左/プリントDに赤味(30R)を加えたもの。
写真下中/プリントD緑味(30G)を加えたもの。
写真上右/プリントDに青味(30B)を加えたもの。
(プリント制作/アロマカラー)

 

モノクロプリントを調色する。


写真⑥A/通常のモノクロネガ。
 モノクロ写真を自家処理している方ならご存じでしょうが、普通のモノクロプリントを薬品で処理(調色といいます)することでセピア調のプリントを作成することができます。セピア調だけでなく、ブルー、ブラウンなど、いろいろな調色が可能です。

 これは、モノクロプリントの画像を形成している「銀」を他の物質に置き換えたりすることで、モノクロプリントに色調を与えるものです。色調を変化するだけでなく、モノクロプリントの寿命を長くできるメリットもあります(調色の種類によります)。

 薬品で処理するなどというと、なんだか厄介そうですが、明るい部屋で1~2種類の薬液にモノクロプリントを浸し、流水で洗うだけの簡単な作業です。当然、暗室は必要ありません。写真用品メーカーから、いろいろな種類の「調色剤」が販売されていますから、これらを購入しプラスチック製のバット(皿)を使って、指定通りに処理してみてください。

 カップラーメンの調理と同じ程度の簡単さです。バットの中で写真の色調が変化していく様子は、それだけでなんだか魔法のような感じがします。ここではセピア調色とブルー調色の例を示します。

 注意して欲しいのは、これらの薬品は飲んだり、目に入れたりすると危険なものです(手で触れる分には大した影響はありません)。取扱い説明書をしっかり読んでください。それから、カラープリントは画像が「色素」でできているため、こうした調色はできません。普通のモノクロプリント(現像所で仕上げられたものでOK)を使用してください。

 これだけでも、暗室作業という魔法の楽しさを味わえるはずです。

写真⑥B/⑧Aから作成したモノクロプリント

左/セピア調色
 市販されているセピア調色剤での処理例です。調色剤によってはタイプの異なるものがありますから、取扱い説明書に従って処理してください。
写真左上/セピア調色剤の「漂白液」で処理しているところ。プリントの黒い部分が淡くなっていきます。
写真左中/セピア調色剤の「再現像液」で処理しているところ。漂白して淡くなった部分がセピア調に現像されます。
写真左下/セピア調のモノクロプリント。通常のモノクロプリントよりも寿命が長くなるのも大きなメリットです。

右/ブルー調色
 市販のブルー調色剤の処理例です。調色液に浸すだけで、プリントがブルーに変色していきます。プリントの保護を大切にする場合には、後に硬膜という処理を行います。
写真右上/セピア調色剤の「漂白液」で処理しているところ。プリントの黒い部分が淡くなっていきます。
写真右中/ブルー調色剤で処理しているところ。
写真右下/ブルー調のモノクロプリント。処理時間などを変えることで色調の濃さを変えることもできます。

 

カラーネガからモノクロプリントを作成する。


写真⑦/コニカブロムパン印画紙。2~4号の号数があります。処理は通常のモノクロ印画紙と同じですが、セーフライトが異なることに注意してください。

写真⑧A/使用したカラーネガ。。
 カラーネガフィルムをモノクロ印画紙にプリントすれば、モノクロプリントができます。当たり前のことです。ただ、ここで問題になるのは、通常のモノクロ印画紙は全ての「色」に感光しないということです。ですから、ぱっと見た目には普通のモノクロプリントになるのですが、その色の濃さの再現がなんとなく不自然に見えたりします。

 これを改善するために開発されたモノクロ印画紙をパンクロ印画紙といいます。コニカからは「コニカブロムパン」という名称で販売され、2~4号までの号数(コントラストの違い)があります。現像処理は通常のモノクロ印画紙と変わりませんが、全ての色光に感じるためセーフライト(安全光)が異なります。通常のモノクロ用セーフライトに比べると随分暗いものですが、カラー用よりは明るいです。

 このパンクロ印画紙を用いることで、カラーネガから綺麗なモノクロプリントを作成できます。また、面白いことに、プリント(露光)時に色フィルターを使用することでモノクロフィルム撮影時に色フィルターを使用したのと同じ効果を得られます。ここには、色分解用のフィルターを使用した例を示しました。9月号で紹介したモノクロフィルム撮影時の色フィルターの効果と見比べてください。

写真⑧(A~G)カラーネガフィルムからのさまざまなプリント
 それぞれの色の再現の違いをしっかり見比べてください。 写真上左/カラープリントしたもの。
写真上中/通常のモノクロ印画紙(レギュラータイプ)にプリントしたもの。パッと見た目には大きな違いはありませんが、赤い服や肌色が不自然です。
写真上右/コニカブロムパン(3号)にプリントしたもの。全体的に自然なモノクロプリントになりました。
写真下左/コニカブロムパン(3号)を使い、赤(R)フィルターを使用したもの。撮影時に赤フィルターを使用した場合や赤外フィルムを使った結果に似ています。
写真下中/コニカブロムパン(3号)を使い、緑(G)フィルターを使用したもの。撮影時に緑フィルターを使用した場合に似ています。口紅や赤い服が黒く強調されました。
写真下右/コニカブロムパン(3号)を使い、青(B)フィルターを使用したもの。撮影時に青フィルターを使用した場合と同じです。また、通常のモノクロ印画紙にプリントしたもの(写真⑩C)にも似ています。