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6.リバーサルフィルムを使う(Ⅳ) 色を考える

 今月は、3原色といった「色」の仕組みについて考えます。ちょっと理屈っぽい感じがするかもしれませんが、おつきあいください。

 しかし、今回の記事を読むだけで、ほとんど全ての写真用色フィルターの仕組みが理解できると思います。リバーサルフィルムでの色フィルターの使い方はもちろん、カラーネガフィルムのプリント時の色フィルター指定、あるいはモノクロフィルムでの色フィルターの効果などもあらかた見当がつくようになるはずです。とりあえず、細かな数値は無視して話しを進めますので、「色」の傾向だけを確実に把握するようにしてください。

「色」を考える。


 この連載の一回目に、フィルムのつくりを紹介しました。その中で、カラーフィルムは赤/緑/青の光に感光する3つの層があり、それぞれシアン/マゼンタ/黄色に発色するようになっていたことを覚えているでしょうか。

 また、4回目と5回目では、リバーサルフィルムで正しい色を再現するために必要なフィルター操作についてもすこし触れました。

 これらの記事を読んで、なんとなくそういう具合になっているものが写真なんだなぁ、とお思いになられた方も多いはずです。事実、そのようになっているわけなんですが、しかし、例えば、3原色の3つの層でなぜ全ての色が再現されるのか? とか、色補正フィルターを用いることで色が正しく再現されるのはなぜか? と聞かれると、ちょっと困りませんか?

 今回は、こうした疑問に答えたいと思います。まずは、写真に関することではなく、我々の目がどのように「色」を見ているのか? といった疑問から始めたいと思います。

「色」を伝える。

  写真0 写真はフィルター越しに見ているように写るのが原則です。難しく考えずにいろいろ試してみるといいでしょう。
   例えば、仕上がってきた写真の色が普通でない! とか、少し変! といった感想をもったことがあると思います。しかし、だからといって、その普通じゃない気持ちとか、少し変な気持ちを正しく人に伝えようとするのは、とても難しいものです。

  本当はもう少し赤いんだけど、とか、こんな色じゃないんだけど・・・。などというしかなくて、はたして実物の本当の色はどういう色なのか? は、相手の想像力に任せるしかありません。不愉快なことに、同じ色味の写真を同じ人に見せる場合でも、その人の気分によって感想が違っていたりしますから、余計に難しかったりします。

  写真① カラーテレビのブラウン管を良く見ると、赤/緑/青の画素でできていることが分かります。それぞれの画素の明るさを変えることで、さまざまな色や明るさが表現されます。
 ここで、一つ覚えておいて欲しいことがあります。「色」というのは、他の「色」と比較して始めて、何色かが決まるような性格が強いということです。まるで、人の情感のあり方そのものだといっていいでしょう。だから、難しい。

 しかし、だからといって、色はいろいろなどといっても仕方がありません。ですから、それこそいろいろな人がいろいろな具合に、「色」を正しく伝える方法を考えてきました。こうした方法を考える学問を、色彩学といいます。これには、物理学者として誰もが知っているニュートンを始め、文豪として名高いゲーテなどもずいぶんと頭を悩ませたようです。われわれはこうした天才たちが生み出した成果によって、今日の生活を営んでいるのです。もちろん、カラー写真はその大きな成果の一つです。

写真左/ 印刷物の写真をルーペで観察すると、シアン/マゼンタ/黄色の3原色のインクで画像ができていることがわかります。場合によっては、これ以外の色インクが使われることもあります。

写真右/ リバーサルフィルムを10倍以上のルーペで拡大すると、シアン/マゼンタ/黄色の粒子で画像ができていることが分かります。高感度フィルムの方が粒子が大きいので観察しやすいです。 
 

 

全ての色の源、「3原色」

図1・光の波長と3原色
 2種類の3原色と光の波長の関係を簡略化したもの。例えば、青(B)と緑(G)を加えると、シアン(C)になることが理解できます。それぞれの色を加えたり減らしたりすることで、別の色が作りだせることを確認してください。
 学生の頃、美術の時間に「3原色」というものを勉強したことがあると思います。たぶん、信号と同じ赤/青/黄が3原色で、これらの絵の具を混ぜ合わせることで、さまざまな色が作りだせると教わったはずです。

 ここで、あれ、と思う人もいるでしょう。写真の3つの層は赤/緑/青でした。これらは写真でいうところの3原色です。あれれ?

 身の回りの幾人かに聞いてみたところ、赤/青/黄が正しいという人も何人かいましたので、どっちが正しいのか、実は私も分かりません。ですが、写真や色彩学に限っていえば、赤/緑/青を3原色としたほうがずいぶん都合がいいですから、これはとにかく覚えるしかありません。

 ではなぜ、これらが3原色なのかというと、どうやら、人の目がそのようにできているからのようです。人の目の網膜には、赤/緑/青に感じる細胞がそれぞれあって、それぞれの細胞がどのくらいづつ光を感じているかで、われわれはいろいろな「色」を見ているらしいのです。

 ですから、色を再現する写真や印刷やテレビは、これらの3原色だけを使って、全ての色を再現することができるのです。(正しくいうと、全ての色を再現しているのではありません、写真や印刷やテレビよりも、現実に見える色の方がはるかに表情が豊かです。)

正反対の色、「補色」

図2・3原色のリング
 2種類の3原色の関係を分かりやすく示したもの。対角線上にある色が補色で、これらの色を加えると無彩色になります(R+C=0など)。また、リング上で一つ飛ばしの色を加えると、それらの間の色ができます(Y+M=Rなど)。  リングの中央が無彩色を意味していますから、中央部は淡い色、周辺部が濃い(彩度の高い)色とし、3原色の間の色の段階も書き加えれば、人の目で見ることのできる全ての色をこの図の中に描くことができます。まさに色の地図ができるわけです。興味のある方は、色彩の本などで調べてみると面白いでしょう。
 さて、もう一つ、美術の時間に「補色」というのも習ったと思います。簡単にいうと正反対の色で、補色同士を混ぜ合わせると色がなくなるような関係にある色のことです。先の3原色の補色を、写真や現代の色彩学で正しくいうと次のようになります。括弧内は英語の頭文字で、略号として良く使いますので、これを機会に覚えてください。

赤(R)←→シアン(C)
緑(G)←→マゼンタ(M)
青(B)←→黄(Y)

 赤/緑/青といった3原色(加色法)の補色には3つの色があって、これが別の3原色(減色法)を形成します。それぞれいずれかの3原色で全ての色を作りだすことができます。シアンやマゼンタというのは聞き慣れない言葉ですが、上の印刷でなんとなく色の感じをつかんでください。  こうしたわけで、写真の色を語る際に必要な2種類の3原色が出そろいました。では、これらの色の関係について、もう少し深く学んでいくことにしましょう。

3原色の面白い性質。


 ちょっと話しがずれますが、音が空気の振動だということを耳にしたことがあるはずです。ゆっくりした振動(低周波数/長波長)は低い音、速い振動(高周波数/短波長)は高い音として人の耳に聞こえます。光もこれに似たところがあって、光の粒(みたいなもの)の振動の違いによって、人の目にさまざまな色を見させます。

 図1に、こうした光の性質を簡単に示しました。上の数値が波長を示しています。単位はナノメートルと読みますが、数値の具体的な意味は無視して構いません。ただ、左側の数値が小さい方が波長が短く(高周波数)青い光に見え、右側にいくごとに波長が長くなり(低周波数)赤い光に見えることを確認してください。この図からはみ出た波長はどうなっているかというと、もっと左側は紫外線、もっと右側は赤外線であって、人の目では見ることができません。色というのは、この図に示した範囲の光の波長によってのみ、人の目で見ることができるのです。

色の足し算と引き算。

 さて、図1を見るといろいろなことがわかってきます。まず、青と緑を加えるとどうなるかを見てみましょう。青は400~500nmの光、緑は500~600nmの光です。これらを加えると、光は400~600nmの領域に広がり、結果、シアンと同じ色に見えることが分かるでしょう。これを数式の例えをかりて次のように示すことができます。

 B+G=C

 なんだかキツネに騙されたような気分かもしれませんが、事実、青と緑のインクを混ぜ合わせるとシアンに見えるのです。

 この調子で、緑と赤を加えれば黄色になること(G+R=Y)、青と赤を加えればマゼンタ(B+R=M)になることを確認してみてください。

 次に、補色の関係をみてみましょう。例えば、青と黄色を加えると、400から700nmまでの全ての光が出そろうことになります。これは、白やグレーや黒といった無彩色になることを意味します(B+Y=0;0は色が無いことを意味する記号だと考えます)。事実、青と黄色のインクを混ぜ合わせればグレーや黒になります。

 これを他の補色関係である、緑とマゼンタ(G+M=0)、赤とシアン(R+C=0)でも確認してみてください。

 ここで、補色関係の色をマイナスで表示する(B=-Y、G=-M、R=-C)と、色の引き算も可能になり、計算結果と実際の色の混ぜ合わせやフィルター操作の結果とがまったく一致します。  面白いでしょう! 

 で、こうした3原色同士の関係をわかりやすく図示したものが図2です。対角線上の色が補色同士。そして、リング上で一つ飛ばしの色を混ぜることで、それらの中間の色になります。図1で説明したことが、わかりやすく示されています。ですから、この図を覚えておきさえすれば、色フィルターの使い方の全てが直観的に理解できるようになります。

 さあて、ちょっと頭がこんがらがっているかもしれませんが、ここまでくればもう完璧です。

色調整フィルターをマスターする。


図3・フィルターの種類とフィルムに届く光
 3原色の色フィルターを用いることで、フィルムに届く光がどのように変わるのかを示したもの。例えば、赤(R)フィルターでは、緑(G)と青(B)の光が吸収されるために、結果として赤味の強い写真になります。色フィルターによって全体的な光量が少なくなることに注意してください。
 以前、写真用色フィルターは色眼鏡のようなものだと書いたことがあります。このことを少し詳しく考えることにします。

 まず、基本的に、レンズの前に色フィルターをつけて撮影すると、その色がついた写真が仕上がります。ここで誤解してはならないのは、色フィルターは光に色をつけているのではなくて、その補色の光を吸収しているのだということです。図3を見てもらえれば、このことがよく理解できるはずです。

 色フィルターはその補色の光を吸収しますから、全体としての光量が低下します。ですから、必ず露出を余分に多くかける必要があります。これをフィルターの露出倍数といいます。一般的なオートカメラはレンズを通過した光を測定しているために、よほど極端に濃い色フィルターでないかぎり、ほとんど補正の必要はありませんが、マニュアルカメラや単体の露出計で測定している場合はこの露出倍数に従った補正が必要です。

 さて、ともかくも、2種類の3原色の色フィルター(色調整フィルターやCCフィルターと呼ばれ、さまざまな濃さのものが市販されています)を使って撮影した例を上に示しました。こうしてみると、色は必ずしも正しくなければならない、というわけではなく、それぞれの色調に個性が感じられるはずです。ですから、まずは、あまり難しく考えずに、色セロハンや色ガラス、あるいは色調整フィルターなどをつかって写真に色をつけてみることをおすすめします。これだけでも写真に新鮮な楽しさを発見できるはずです。

 逆に、光源などによる色の偏りを補正したい場合には、補色の色フィルターを使えばよいことは、もうおわかりのはずです。もちろん、その濃さが問題になりますが、蛍光灯による緑の偏りを補正するには、緑の補色であるマゼンタのフィルターを使えばよいことは確実です。そしてこれは、他の全ての色補正に関してもいえるのです。 3原色で全ての色ができるわけですから、原則として、どのような色の偏りでも、3原色のフィルターを適当に使うことで補正可能です。

写真④色調整フィルターの効果  3原色の色調整フィルターを使用した時に、写真の色がどのように変化するかを示したものです。補色の色フィルターは正反対の効果になることを確認してください。また、色が偏った写真にも、それぞれの表情があることを理解してほしいと思います。。

 

光源の色のバランス、「色温度」

図4・色温度調整フィルターの効果
 色温度とは、赤/緑/青光のバランスのことです。この図で右肩上がりは色温度が低く、左方上がりは色温度が高いことを意味します。色温度調整フィルターを用いることで、こうした赤/緑/青光のバランスを変えることができます。
 写真フィルムやフィルターなどの解説で、色温度という言葉を聞いたことがあると思います。正しくは、光の質を完全黒体の温度との関係で示すものですが、簡単にいうと、光源の3原色(R/G/B)の比率(バランス)を示したものです。

 色温度が高いということは赤光が弱く青光が強いことを意味します。色温度が低いということは赤光が強く青光が弱いことを意味します。実際の光源を、色温度の高い順に並べると次のようになります。単位は度ケルビンと読みます。

①曇り・日陰/7000~6000°K

②昼光・ストロボ/6000~5000°K

③朝夕/5000~4000°K

④写真用電球/3500~3100°K

⑤家庭用電球・夕焼け/3000~2500°K

 これに対して、一般的なリバーサルフィルム(デーライトタイプ)は色温度5500°Kの光源で正しい色に再現されるように設計されたものです。このため、正しい色を再現するには、光源の色温度の違いを補正する必要があるわけです。

 しかし、振り返ってみれば、色温度というのは3原色のバランスのことですから、単純に3原色のフィルターによって調整できます。ただ、濃さの違う2色のフィルターを使う必要があり、とても面倒です。

 これを簡単にしたののが、色温度調整フィルターで、1枚のフィルターで3原色のバランスを調整できる便利なものです。日陰用や電球照明の補正フィルターがそれです。

 もちろん、色調整フィルターと原理自体は変わりませんから、色を補正するためだけでなく、写真に色をつける(色温度を変える/色のバランスを変える)ために使用することもできます。

写真⑤色温度調整フィルターの効果
 色温度調整フィルターには、色温度を高くする青系のものと、色温度を低くするアンバー系の2種類があります。これらの効果は正反対で、ちょうど補色のような関係にあります。色温度を調整するというと難しいですが、単純にフィルターの色が加わって写るだけです。3原色の色とは少し違った色になっていることに注目してください。

 

色を補正するにはどうするか?

 もし、色が偏って写った場合には、次の要領でフィルターを選んでみてください。補色がわからなかったりしても大丈夫。また、どの程度の濃さの色フィルターを選べばよいかさえ、この方法で簡単に知ることができます。

 まず、色の偏った写真(リバーサルフィルム)をライトボックスの上に置き、それをフィルター越しに見るのです。そうして見える結果が、そのフィルターで補正された結果とだいたい同じです。もちろん、露出補正の関係などで多少の違いはありますが、これでおおまかな見当がつきます。とりわけ、淡い色の補正はこれで完璧に行えます。一度試してみてください。

写真⑥
 色補正フィルターを選ぶには、ライトボックスの上に色の偏った写真を置き、それを色補正フィルター越しに観察すれば、おおよその見当がつきます。肌色やグレーの部分に注目して見比べてください。