前回は、白黒フィルム、カラーネガフィルム、リバーサルフィルムの3種類のフィルムの大まかな原理と使い方について整理しました。
ところが実際には、同じカラーネガフィルムでもいろいろな品種があったりして、いったいどれを選んでよいのか判然としないものです。白黒フィルムもリバーサルフィルムも同様です。今回はこうしたさまざまな品種のフィルムを選ぶ際に、もっとも注目しなければならないフィルムの感度について考えてみたいと思います。
フィルムの感度表示を確認する
フィルムの名称には、たいてい大きく数字が記されています。例えばインプレッサ50プロ、JX100、GX3200プロといった具合です。これらの数値は、フィルムの感度を示すもので、正式にはISO50とかISO100と表示され、パッケージやパトローネ、あるいは使用説明書に小さく記載されています。
フィルムの感度とは何か? というと、光に対する感じ易さのことで、数値が大きくなるごとに、弱い光にも感じるフィルムであることを意味します。つまり、数値が大きいほど、暗い場所でも撮影ができるわけです。
感度は、ISO100を中間にして、これ以上の感度をもつフィルムを高感度フィルム(ISO400など)といい、さらに感度の高いフィルムを超高感度フィルム(ISO3200など)といいます。逆に、数値が小さく強い光にしか感じないフィルムを低感度フィルム(ISO50など)といいます。ただ、こうした言い方は厳密なものではなく、結構あいまいに使われているようです。
| 写真①パッケージに記されたISO感度。 ISO100/21°と記されている。 100はアメリカ規格、21°はドイツ規格の表示で同じ意味内容である。 |
| 写真②フィルム感度をカメラにセットしているところ。 これを合わせると、カメラの露出計がフィルム感度に合わせて正しく作動する。 |
| 写真③パッケージのDXコードと呼ばれるもの。 フィルムの感度などを、自動的にカメラにセットする役目をもっている。 |
| 写真④カメラのDXコード読み取り接点。 フィルムのDXコードをこれらの接点で電気的に読み取る。 |
【感度表示の意味は?】
さて、だいたいの感じはつかめたと思いますが、具体的な数値の持つ意味は何かを簡単に述べてみましょう。
カメラを使って、フィルムに届く光の量(露出)を調整するのは、①レンズの絞り(F値)と②シャッタースピードの二つです。最近のオートカメラでは、直接これらを操作することはまれですが、どのようなカメラでも結果的にはこれら2つを操作して、露出を調整しています。
ここで、晴天順光下で撮影する場合を考えてみます。厳密にいうなら、真夏と真冬では光の量が違いますが、まあ、おおざっぱに行きましょう。とにかく雲一つない晴天の日中に、太陽を背にして風景や人物を撮影するわけです。
この時、レンズの絞りをF16に合わせ、シャッタースピードの目盛りをフィルムの感度に最も近い数値に合わせれば、そこそこ標準的な露出で撮影することができます。例えば、フィルム感度ISO100の場合なら、シャッタースピード1/125秒に、ISO400なら1/500秒に合わせればよいわけです。※注1
こうしたわけですから、フィルムの感度は高ければ高いほど、速いシャッタースピードで撮影できます。レンズの絞りで露出を調整するなら、絞りをもっと絞りこんで撮影できることになります。つまり、高感度フィルムを使うことで、被写体ブレやカメラブレを防止したり、被写界深度を深くしてピンボケを防せいだりできるわけです。このように、初歩的な失敗を未然に防止することができるのも、高感度フィルムのメリットといえます。
※注1 正しくは、1/100秒とか、1/400秒となりますが、多くのカメラにはこうしたシャッタースピードはありません。ですから、もっとも近い数値に合わせるわけです。数字だけを見るとずいぶんな違いがあるように思うでしょうが、この差を絞り値やシャッタースピードの段数に換算すると約1/3段で、リバーサルフィルムでも、違いはほとんどわかりません。露出を考える場合、このように具体的数値にこだわらず、何段分変化するかを念頭に置くようにしてください。
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| 現在、コニカから発売されている35ミリフィルムの全てを種類と感度別に整理したものである。リバーサルフィルムの森羅100とR-100、カラーネガフィルムのJX100とLV100や、スーパーDD200プロとLV200など、同じ種類・感度でも異なる銘柄のフィルムがあることに注意。こうして並べられると、どちらが良いか? と聞きたくもなるが、こうした質問には答えるのが難しい。何をもって良いフィルムというか? が結構あいまいだったりするからである。というよりもこれらの違いは、ルーペで拡大したり、ていねいに作成した大伸ばしプリントを直接比較して始めてわかる程度の違いしかないと思ってよい。言ってみれば、好みの世界の話なのである。 これよりも差が大きく、しかも撮影にとっても大切なのは感度による違いである。詳細は次項に整理する。特殊なフィルムとしては、コニカクロームMCと赤外750がある。それぞれの解説を参考にしてもらいたい。 |
感度の違いによる描写の違い
下の写真は、インプレッサ50、LV400、GX3200プロを使って、同一露出で撮影したネガとそのプリントです。手札サイズの手焼きプリントでは、ちょっと見た目には大きな違いはないように見えます。おそらく印刷ではほとんど違いは分からないはずです。驚くべきことに、目の検査表はGX3200でも最下段まで読み取ることができます。
しかし、目の部分を拡大したプリントでは画質の違いは一目瞭然。感度が高くなるほど、画質が粗くなっていることがわかるでしょう。色調の違いは微細ですが、LVシリーズは他に比べてやや派手めの設計になっているようです。(プリント制作/アロマカラー)
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| ISO50 「インプレッサ50」での撮影結果 | ||
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| ISO400 「LV400」での撮影結果 | ||
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| ISO3200 「GX3200プロ」での撮影結果 | ||
感度と画質の違い
高感度のフィルムの方が、暗い場所で撮影できたり、撮影時の失敗が少なくなることがわかりました。しかし、悲しきかな、いいことばかりではないのです。
単純にいうと、フィルムの感度が高くなればなるほど、画質は悪くなります。画質が悪いなどというと、なんとなく使う気分が失せるような感じもしますので、少し正しくいうと、画質が粗くなります。
ちょっと言葉だけでは頼りないと思いますので、上の比較用の写真を見てください。最高画質を誇るインプレッサ50と、スナップなどでも使い勝手のよいLV400、超高感度で室内スポーツなどの撮影も楽にできるGX3200プロを使い、同じ被写体を撮影したものです。レンズの絞りやシャッタースピードも同じにして、被写体に当たる光量だけを変化して撮影しました。プリントも注意を払ってもらって、それぞれの色調をできるだけ揃えるようにしてもらいました(手焼きプリント)。ですから、これらの違いは、カメラやレンズの違いによるものではなく、フィルムの違いだけによるものです。
単純に、どれが綺麗かと聞かれると、インプレッサ50でしょう。非常にキメが細かく、滑らかな描写であることがわかります。ピントも非常に良く見えます。これに対して、GX3200プロの方は、ざらざらしていますし、やや硬い感じがします。ピントも少し悪いように見えます。LV400は、これらの中間といったところでしょうか。 画質って何だろう?
ここで、少し冷静になっ考えてみましょう。普通に画質というと、インプレッサ50のように、キメが細かく、滑らかでありながら、ピントもシャープに見えるようなことをいいます。ですから、一般に低感度フィルムの方が画質が良いという言い方をするわけです。 しかし、例えば、被写体に当たる光が十分でない場合にインプレッサ50のような低感度フィルムを使うと、被写体ブレやカメラブレやピンボケになる可能性は大変大きくなります。もちろん、十分な光があったとしても、気軽に手持ちでスナップ撮影するとなると、やはり失敗の確率も高くなったりします。こうした失敗写真の画質とは何を意味するでしょうか?
逆にいえば、GX3200プロのようにざらついた感じの写真に、なんとなく荒々しかったり、ミステリアスな雰囲気を感じることもあります。これは画質が悪いせいなんでしょうか?
言いたいのは、次のようなことです。
低感度のフィルムは画質が細かい。これは確かです。しかし、どのような被写体をどのように撮影しても満足のいく結果を得られるか? というと、話は別なのです。まず考えておきたいのは、被写体の明るさによって、適当な感度のフィルムを選ぶこと。そして、超高感度フィルムのいわゆる画質の粗さだって表現効果にもなりえることを忘れないでおきたいものです。
【高感度フィルムのススメ】
最近では、ストロボ内蔵のカメラが主流になっていますから、室内や暗い場所での撮影も安心してできるようになりました。しかし、案外、ストロボで撮影した結果に幻滅した経験のある人も多いのではないでしょうか? なぜなら、どこでどのように撮影したものでも、だいたい同じような写りになってしまったりします。撮影場所の雰囲気や光の当たり具合に感動して撮影したものでも、おしなべて同じような写りになってしまうのです。なぜでしょうか?
原因は内蔵ストロボにあります。写真というのは、だいたい人の目で見ているように写るものですが、ストロボの光は一瞬だけ光るために、どこに光が当たって、どこに影が落ちているのかがさっぱり見えません。しかも、カメラ内蔵のストロボは全てカメラ位置から発光しているのです。ですから、何をどのように撮影しても、同じような写りの写真になってしまうわけなのです。
もちろん、内蔵ストロボによってブレや露出の失敗が少なくなっていることは事実です。ですが、できるだけ使わない撮影を心掛けて欲しいものです。そうするだけで、より自然な光を感じさせる写真を撮影できるようになります。
もちろん、低感度のフィルムでは撮影がより難しくなるでしょうから、高感度フィルムや超高感度フィルムで撮影してみてください。夜間の撮影、結婚式の披露宴や舞台、室内での家族写真などにも使って貰いたいと思います。こうした、(超)高感度フィルムを使い、内蔵ストロボを発光しないように撮影するだけで、一味違った写真を撮影できるようになるはずです。
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ISO3200の超高感度フィルム(GX3200プロ)では、ローソク一本だけの照明でも撮影できる。F2.8・1/30秒。 |
【もっと自在に感度を選ぼう】
さて、普通に考えると、高画質の低感度フィルムは、三脚を使って、落ちついて撮影するものですが、こうした常識に捕らわれずに、例えば、被写体ブレやカメラブレも作画効果のうちという具合に考えれば、低感度のフィルムももっと楽しく使えると思います。低感度ですから、普通以上にブレるはずです。中途半端なブレは失敗に見えますが、大きなブレはそれだけで説得力のある表現効果になります。また、低感度フィルムならではの、なめらかな描写のブレが期待できたりするでしょう。
また、逆に、超高感度フィルムを日中に使ってみたりするのも面白いものです。レンズの絞りは限界まで絞り込んでいるでしょうし、シャッタースピードも数千分の1秒という高速になるでしょう。人物を撮影するなら、思いっきりジャンプしているところを撮影したり、噴水の水が勢いよく飛び出しているシーンを撮影すると、思いも寄らない写真が撮影できるはずです。もちろん、直射日光での男性のポートレートやちょっと怪しい街中のスナップなど、ざらついたイメージをより効果的に見せられる被写体を撮影してみるのも面白いと思います。
とにかく、全ての35ミリフィルムは気軽に使えるものですから、いわゆる画質だけを気にせずに、その写り方を楽しみたいものです。考えてみれば、写真家がフィルムを選ぶというのは、画家が絵の具を選ぶようなことなんです。もっともっと自由であってよいと思います。
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フィルム感度と撮影条件おおまかに標準的な露出を得られる条件を示した。常用しているフィルム感度で、撮影条件と絞り値、シャッタースピードの値を確認してみるとよい。これを全て覚える必要など全くないけれど、これらの数値の意味を読み取れるようにはなりたいものである。フィルムの使用説明書に、詳細なデータが記されているので確認して欲しい。 |















